取寄洋菓子

埼玉民話「かっぱのとっくり」

かっぱのとっくり

昔、深谷の東方(ひがしかた)に「いだてん半次郎」と呼ばれる飛脚が住んでいたそうな。
半次郎は、朝夕二回、深谷宿と熊谷宿の間を風のように突っ走って、家々に手紙を届けていたと。

ある朝のこと、半次郎が、手紙の入った箱を肩に担いで、中仙道を走っていると、橋の真ん中に何者かが倒れていたそうな。近寄ってみると、それは年老いたカッパだったと。
カッパが「馬のしりに食いつこうとしたら、逆にけとばされてしまった」と言うので、半次郎は、手ぬぐいに川の水をたっぷり含ませ、カッパの皿をぬらしてやったそうな。カッパは元気を取り戻して、川へ帰って行ったと。

その夜、半次郎の家にカッパがお礼にやってきたそうな。カッパは「半次郎さんは酒が好きなようだから、これをあげましょう」と言って汚いとっくりを差し出したと。
「これは珍しいとっくりで、酒が飲みたければいくらでも飲 め、どんなに飲んでも酒はなくなりません。けれども、とっくりの底を三回たたくと、酒は一滴も出なくなります」。
カッパはそう言うと帰って行ったそうな。

カッパのとっくりの酒は、たいそううまかったと。半次郎は、飛脚をやめてしまい、毎日とっくりの酒を飲んでは、ごろごろしていたそうな。

ある日、隣の家の娘が高い熱を出したと。娘の父親は、足の速い半次郎に「医者様を呼んで来てくれ」と頼んだそうな。「いいとも」。半次郎は言うが早いか駆け出したと。しかし、半里(約2km)も走ると息切れがし、目が回って走れなくなったそうな。

やっと医者様が娘の家へ着いた時、娘は亡くなってしまったと。「もう半時(約1時間)も早ければ間に合ったのに」と医者様に言われ、半次郎の心は痛んだそうな。半次郎は、とっくりの底を三回たたいたと。酒は一滴も出なくなったそうな。

半次郎は酒をやめ、再び飛脚の仕事に精を出すようになったとさ。